木魚歳時記 第3049話

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 屋根を粗雑に葺(ふ)いてある家には雨が洩れ入るように、心を修養していないならば、欲情が心に侵入する。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(805) 正木ゆう子さん。「月のまはり真空にして月見草」(句集『静かな水』) 天体の運行(法則)について作者は関心をお持ちのようです。それに関した作品(俳句)の多くあることは以前にも触れました。句集『静かな水』のベースとなるように思います。地球(「月見草」)のまわりも、そして月のまわりも、すべて「真空」。このあたりまえのこと(真理)を、17文字の世界にもちこんで、しかも成功した作品です。

 「今日のことば」
         神様は私たちに、

         成功してほしいなんて思っていません。

         ただ、挑戦することを望んでいるだけよ。
          (マザー・テレサ)

         聖火よりこぼれおちたる白蛾かな

 

木魚歳時記 第3048話

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  まことであるものを、まことであると知り、まことでないものを、まことでないと見なす人は、正しき思いにしたがって、ついに真実(まこと)に達する。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(804) 正木ゆう子さん。「あつそれはわたしのいのち烏瓜」(句集『静かな水』) 夜間にひらく「烏瓜」(からすうり)の花は、雪の結晶に似て幻想的です。しかし、掲句は、もちろん、あの鮮やかな朱色をした果実の方でしょう。茂みにひそむ「烏瓜」(からすうり)は発見者の目をひきつけます。また、蔓をひきよせ烏瓜を手中にしたときのワクワク感はたとえようがありません。おそらく恋人を手中にしたときの感激と似ているのでは?

 「今日のことば」
         他人もまた同じ悲しみに悩んでいると思えば、
         心の傷はいやされなくても、
         気は楽になる。
         (シェイクスピア)

        青鷺のその胃袋に魚いくつ

木魚歳時記 第3047話

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 まことでないものを、まことであると見なし、まことであるものを、まことでないと見なす人々は、あやまった思いにとらわれて、ついに真実に達しない。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(803) 正木ゆう子さん。「星月夜生れむといのちひしめけり」(句集『静かな水』) ビッグバーンによる太陽系の誕生。水の惑星(地球)の誕生。こうした気の遠くなるような大自然のスペクタクルの中で生命の誕生がありました。こうした自然現象の壮観さを17文字で表すなら、上記のような作品が生まれるのでしょう。この作者の宇宙への関心の深さと造詣の豊かさには敬服します。

 「今日のことば」
         下を向いていたら、
         虹を見つけることは出来ないよ。
         (チャップリン)

         のんちやんは雲になりたり春夕焼

 

木魚歳時記 第3046話

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 けがれた汚物を除いて、戒律を守ることに専念している人は、自制と真実をそなえているから、黄褐色の法衣をまとうのにふさわしい。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(802) 正木ゆう子さん。「月光を感じてからだひらく駅」(句集『静かな水』) 一転、繊細な感覚の伝わる作品です。夜半に、山深いローカル線の駅に降り立った女性の独り旅のような映像が浮かびます。前に、「オートバイ内股で締め春満月」(ゆう子)。を読んでドキリといたしました。今回の「からだひらく駅」はこれと違う意味で、やはりドキリといたしました。こうした心象表現においても実に巧みなのが作者です。

 「今日のことば」
         焦ることは何の役にも立たない。
         後悔はなおさら役に立たない。
         焦りは過ちを増し、
         後悔は新しい後悔を作る。
        (ゲーテ)

         雛罌粟や君もコクリコ吾もコクリコ  

                         雛罌粟(ひなげし)

木魚歳時記 第3045話

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 けがれた汚物を除いていないのに、黄褐色の法衣をまとおうと欲する人は、自制がなく真実も無いので、黄褐色の法衣をまとうのにふさわしくない。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(801) 正木ゆう子さん。「魔がさして糸瓜となりどうもどうも」(句集『静かな水』) 「揚雲雀空のまん中ここよここよ」(ゆう子)の手法と似たところがあります。また、池田澄子さんの「頬杖の風邪かしら淋しいだけかしら」(澄子)の軽妙さとも相通じるものを感じます。正木ゆう子さんの作品を拝見して、いつも思うのは、難解な構成とか難しい語彙(ごい)の使用が少ないことです。自然に対する「畏敬」(いけい)の気持ちが句作の根底にあるのでしょうか?

「今日のことば」
        元気を出しなさい。
        今日の失敗ではなく、
           明日訪れるかもしれない成功について
        考えるのです。
       (ヘレン・ケラー)

        三婆のチチポポチチと囀れり 

                    三婆(さんばあ)

 

木魚歳時記 第3044話

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 この世のものを浄(きよ)らかだと思いなして暮らし、(眼などの)感管をよく抑制し、食事の節度を知り、信念あり、勤(つとめ)励む者は、悪魔にうちひしがれない。岩山が風にゆるがないように。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(800) 正木ゆう子さん。「能村登四郎一生細見捩花」(句集『静かな水』) 能村登四郎さんは正木ゆう子さんのお師匠さんです。ゆう子さんは「能村登四郎は長身でほっそりとして寄りつき難い威厳を示していた。とやかく弟子に示すようなことはなかった。」そんなことを記しておられます。師匠の一徹なところ?を慕っておられたのでしょうか。それはともかく、この場合「捩花」(ねじればな)の季語がとてもよく効いていて面白いです。

 「今日のことば」

         たえずあなたを、
         何者かに変えようとする世界の中で、
         自分らしくあり続けること。
         それがもっとも素晴らしい偉業である。
         (エマーソン)

         花は葉に生みたて卵かけごはん

 

 

木魚歳時記 第3043話

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 この世のものを浄(きよ)らかだと思いなして暮らし、(眼などの)感管をよく抑制せず、食事の節度を知らず、怠けて勤めないものは、悪魔にうちひしがれる。弱い樹木が風に倒されるように。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(799) 正木ゆう子さん。「しずかなる水は沈みて夏の暮」(句集『静かな水』) 「しずかなる水はさらに沈みて静かとなるであろう」とは作者の弁。作者の居住される近くには小さな湖があるようです。作者は、ときには、湖の水に手を触れそのささやきに耳をかたむけ、湖面を見て水の深さを知り、あるいわ、汀(みぎわ)の大樹の幹によりかかり、樹液の音(こえ)を感じるのを楽しみとされるのでしょうか?

「今日のことば」
        私たちは、いわば二回この世に生まれる。
        一回目は存在するために、
        二回目は生きるために。
         (ルソー)

         ダメなのよだめだめだめよ蟇蛙 

                                   蟇蛙(ひきがえる)